薬屋 の ひとりごと ss。 #薬屋のひとりごと #壬氏 薬屋SSまとめ 2

#5 壬猫SS 雷鳴

薬屋 の ひとりごと ss

空がどんよりと暗く雷が鳴り響く。 猫猫は駅の階段下でため息をついた。 朝は良い天気だったのに。 湿った空気が気持ちを重くする。 猫猫は公立薬科大学の1年生で、薬学部で学んでいる。 朝から必須科目の講義のため大学に行き、午後は基礎研究で実験室に篭っていた。 夕方から最寄り駅の隣接するビルの本屋でバイトの仕事をこなして、夜ようやく一人暮らしのアパートに帰ろうとした所だった。 全く持ってついていない。 次第に雨が強く降ってきた。 猫猫は傘を持ってこなかった自分を恨んだ。 雷の強い光が足元を反射する。 バスは大幅の遅延で長蛇の列が出来ている。 タクシーも掴まらないし、貧乏学生の自分にそんな余裕は無い。 「猫猫?今帰りか?」 振り向けば、傘を持った瑞月が立っていた。 「瑞月さんこそ、今日シフトじゃないですよね?」 「俺は授業が6限まであったからな。 」 「…そうですか。 」 瑞月は同じく本屋のバイト仲間である。 猫猫より1つ年上の、荔都大学の2年生。 荔都大学と言えば、金持ちボンボン、社長や政治家のご子息、ご令嬢方が通う事で有名である。 巷の噂では、皇族の御子も通っているとか。 「LINE送ったんだが。 」 「仕事中でしたから、まだ見てません。 」 猫猫は雷より鋭く言い放った。 瑞月は一瞬ビクっとしたが、直ぐに穏やかな顔に戻り、「お疲れ様。 」と猫猫の頭を撫でた。 猫猫は大人しい態度を装いながら、アパートまで帰る手段を考えていた。 金持ちの瑞月なら、使用人が車で迎えが来るのかもしれない。 「猫猫、家まで送ろう。 」 「え!御遠慮させていただきます。 」 「それじゃ彼氏失格だろ。 」 彼氏と、瑞月は当然とばかりに言った。 1か月前の事だった。 バイト終わりに、たまたまシフトが一緒だった瑞月に付き合ってくれと突然言われた。 猫猫は、金持ちボンボンの知り合いが1人くらいいても良いと思い、快諾した。 瑞月は喜び、その夜、駅前の女性客で賑わうカフェに連れて行かれた。 インスタ映えとかいう巷の流行なのか、店内は豪華絢爛な宮のような色鮮やかな光景が広がっていた。 猫猫は、瑞月はこの店にずっと来たかったと話すのを見て、女々しい奴だと思った。 男1人で入るのが勇気がいるから猫猫に付き添いを頼んだのだろう。 女の園の様な雰囲気である。 ところが、瑞月の顔が赤くなったり青くなったり信号機の様に色が変わるので、猫猫は不思議に思った。 瑞月は付き添いではなく、男女交際の申し込みを猫猫にしていた。 この事実に気づいたのはつい一週間前の事だった。 好きという告白もなく、たまたま彼氏がいなかったこともあり、流されるまま猫猫は瑞月と男女としてのお付き合いをすることになった。 今、猫猫が家まで送って欲しくない理由が2つほどある。 1つめは、住んでいるアパートはケチで有名な婆が管理人である。 余程のことが無い限り、改修をしないものだから、見た目からボロアパートと呼ばれてもおかしくない。 2つ目は、カップルの愛の巣のホテル街が猫猫の住むアパート近くに隣接しているからだ。 ラブホ街を突き抜ければ近道なのだが、避けて通るとえらく時間がかかる。 猫猫が言い淀んでいると、瑞月がポンっと手を叩いた。 「じゃあ、俺の家に来ないか?」 「は?!」 「雨宿りついでにどうだ?」 「いえ、瑞月さんの家ってどこら辺でしたっけ…。 」 同じ駅だとは知っていたが、家の所在地まで興味を持っていなかった。 瑞月はあれだと、駅前からすぐ側に見える高層マンションを指差した。 駅前の再開発で、高層マンションが一年前に立ったのは記憶に新しい。 高層階は億もくだらないと猫猫はアパートの管理人の婆に聞いたことを思い出した。 金持ちは同じ最寄り駅でも住んでる所が違う…。 猫猫は目眩がした。 雨は激しさを増し、昼間の様な明るさを感じたと同時に大きな落雷が近くで落ちた。 足先から振動が伝わる。 バリバリと乾いた音とやたらと焦げ臭い。 猫猫は目の前が真っ白になった。 甘い蜂蜜の様な香りがする。 長く美しい黒髪が目の前で揺れる。 「猫猫…好きだ。 」 柔肌に紅い花びらが散る。 襟元からのぞく頂点が固くなる。 「あっ…」 ここはどこだ? 粗末な薬屋の様だ。 相変わらず締め切った窓の外は大雨で辺りは雷が次々に鳴っている。 猫猫は惚けた声で絶え間なくやってくる羞恥心の波に耐えていた。 太腿まで蜜が垂れている。 目の前の男は、漢服の様なものを半分脱ぎ捨て、鍛えた身体が猫猫の視界を覆う。 猫猫は官女の服を着ていた様だ。 概ね乱れているため、元の服の判断が難しい。 「全てだ、お前の全てが欲しい。 」 そう言って男は、猫猫の憂いを帯びた花の蕾を指でゆっくり撫でる。 開花を待つようにじっくりと焦らしていく。 「じ、壬氏様…汚いです。 」 ぐちゅりと指が濡れた音がした。 壬氏?どこかで聞いたことがある名前だ。 何を言ってるのだ、自分は。 「…月だ。 」男の声が上手く聞き取れない。 「妻にすると言っただろ。 」ここは聞こえないフリをした。 バイト先で、後宮小説フェアなるものが絶賛開催中なのを思い出した。 その影響でこんな夢を見てるのかもしれない。 猫猫は両手を伸ばし、男の顔にかかった前髪をかきあげた。 そこには見慣れた美しい顔があった。 「瑞月…さん?」 「やっと起きたか。 」 夢だったのか。 猫猫はやっと自分がいる場所をなんとなく把握した。 おそらくここは瑞月の家であり家主のダブルベッドの上にいる。 さすが坊っちゃまは違う。 シーツも上等なものだ。 猫猫は初めて来たはずなのに、なんだか懐かしい香りがするのは何故だろうと首を傾げる。 あの後、瑞月は雷のショックで倒れた猫猫を自分の家まで運んだらしい。 なんたる事だ。 その間、淫らな夢を見ていたなんて口が裂けても言えない。 お礼を言って、猫猫は飛び起きようとした。 瑞月はそっと猫猫の額に手をやり、呟いた。 「待ちくたびれだぞ、猫猫」 天上の音楽が猫猫を包む。 これは前世の記憶か、懐かしい光景が目の前に広がっていく。 私はしがない薬屋で、貴方は私を妻にすると言った高貴な方で…。 猫猫の目から、一粒の水滴が零れた。 「ただいま、瑞月様」.

次の

#9 薬屋SS 姚のひとりごと

薬屋 の ひとりごと ss

子昌:宮廷の西の狸。 女帝と先帝の信頼もあつかった子の一族の長。 後宮を肥大化させる現帝にとって頭の上がらない者の一つとして言われていた。 実際は、後宮は女帝とともに考えた奴隷交易に対する対策の一つであり、後宮の縮小を頑なに拒むのも、偽善的ともとらえられる奴隷制の廃止によって起こる問題を押しとどめるためだった。 子の一族だが傍流であり、娘しかいなかった当時の神美の父が神美の許嫁として引き取った養子。 赤と緑が区別つかないことも養子にした理由の一つである。 真実は純粋で一途な男であったが、その想いが神美に通じることはなかった。 子の一族の長でありながら、養子の手前、一族の手綱をとることが難しく、それゆえ娘たちまで見守れるほど器用ではなかった。 神美:子の一族の直系、子昌の妻、楼蘭の母。 昔は良くも悪くも育ちのいいお嬢様だったが、後宮に連れてこらえたことで性格が歪んでいく。 先帝は上級妃である自分には目もくれず幼い自分の侍女を孕ませる。 その後も、妃としての役割を果たすことなく、後宮の醜聞におけるピエロとして扱われる。 一度は、子昌より後宮の抜け穴の話を聞いて駆け落ちをほのめかされるが、それもプライドがゆるさなかった。 その後、美しさの最盛期をとうに過ぎた頃、子昌に下賜されるがそのとき、子昌には妻と子がいて、しかも憎いあの侍女の子だとわかる。 その後、楼蘭を産んだのもただ国を傾けるための道具が欲しかったにすぎず、ろくでもない享楽にふける悪女となるが所詮小物だった。 もし、少しでも彼女が子昌のことをわかってやったら、翠苓はどんな手を使ってでも命乞いをするつもりでいた。

次の

#薬屋のひとりごと #壬氏 片恋

薬屋 の ひとりごと ss

本作は小説投稿サイト「小説家になろう」発の作品で、中世の宮中で下働きをする元薬屋の少女・猫猫(マオマオ)が、宮中で囁かれる噂話をきっかけに、好奇心と知識欲、そしてほんの少しの正義感をもって数々の謎や騒動を解決していくミステリーを描く。 原作小説は現在第7巻まで発売されており、2月28日には最新8巻も発売となる。 シリーズ累計130万部を突破する人気シリーズのオーディオドラマの詳細については今後の続報を楽しみに待ちたい。 【第8巻あらすじ】 毒で体調を崩した姚が医局勤めに戻れるようになった頃、猫猫のもとに大量の書物が届いた。 送り主は、変人軍師こと羅漢。 碁の教本を大量に作ったからと、猫猫に押し付けてきたらしい。 興味がないので売り飛ばそうかと考える猫猫の考えとは裏腹に、羅漢の本によって、宮中では碁の流行が広がっていくことになる。 一方、壬氏はただでさえ忙しい身の上に加えて、砂欧の巫女の毒殺騒ぎや蝗害の報告も重なり、多忙を極めていた。 そんな中、宮廷内で碁の大会が企画されていることを知った壬氏は、羅漢のもとに直接交渉をしかけに行く。 本作は2017年より「ビッグガンガン」と「サンデーGX」の2誌で、それぞれ異なる作画担当者によりコミカライズの連載も行われている。 漫画化に続いてオーディオドラマ化が進行するこの機会にぜひ本作を読んでみよう。 『薬屋のひとりごと』は、ヒーロー文庫より第7巻まで発売中。 最新8巻も2019年2月28日発売。

次の